・てんかんイーブニングセミナーEESB第四期第1回を開催

・てんかんイーブニングセミナーEESB第四期第1回を開催

てんかんイーヴニングセミナーEESB、ベーテルてんかん実践講座2019年第Ⅳ期第1回講義(2019年11月14日開催)を報告する。2016年1月、当院ベーテルのMRI装置が更新され、3テスラ機、GEヘルスケア・ジャパン株式会社製Pioneer SIGNA 3.0Tとなった。3テスラ機では、いわゆる脳血流を計測できる3D ASL検査が可能になった。3年弱の期間で、ベーテルMRI室も経験を集積してきた。このデータのあらましを検査技師、笠原秀敏が発表した。なお、幸運にもGEヘルスケアの技術研修担当の吉野要氏の助言を得ることもできた上に、重ねてASL技術の基本原理の補講を得ることもできた。

脳内血管の灌流画像法のゴールドスタンダードには、造影剤を用いるPETやSPECTがある。とはいえ、放射能物質を使用する方法のため内部被爆という重大な問題がある。新世代のMRI装置がこの難題に答えようとしている。MRIでの灌流画像法、ASL検査  (Arterial Spin Labeling:訳は難しいが、非造影頭部灌流画像などが分かりやすい)である。

 

PETやSPECTでは放射性同位元素の造影剤を注入し、この放射性同位元素が病変などに集積する姿を装置で読み取るものだ。一方、ASLは撮像領域の手前2cm辺りから、動脈血に高磁場で発生させた高周波パルスを当て、ラベリング(簡単には磁石の向きを一斉に変える)した動脈血(赤血球)が1−6秒後にどこまで流れていったかを測定する方法である。血液をたたえる病変があれば、ラベルされた血液はその場に多く集まり、血管成分が乏しい、あるいは組織の損傷がある部位にはラベルされた血液は入っていかない。この原理で、ASLは組織におけるパルスの分布(血液量―流れているものなので灌流と呼ぶ)を示している。

 

ASL測定が可能なMRI装置を得て、ベーテルはASLをルーチン検査内に組み込みはじめた。目的は二つ、発作日時と関係しない、普通の状態の時の通常安静時ASLの診断が一つ。二つがダイナミックな発作時ASLの診断である。ベーテルのASLの件数も導入初期の2016年は109件に過ぎなかったが、2019年は、9月30日の時点で478件なので、5倍を超えそうだ。年ごとにASL所見陽性数と陽性率をフォローすると、2018年での陽性率が最も多く103件、陽性率は34.0%で驚異的な数値となる。この高率の陽性率は、第一目的の主に脳梗塞や脳炎等病変による血流低下をもちろん含む。てんかんの病因と絡むので、更に詳細な分析結果が期待されている。一方、てんかん病院ならではの第二目的、発作時のASLでの陽性率の分析が求められている。発作中に、あるいは発作直後に、余りにも明瞭な局所性の血流増加が認められることに気づかれた5症例のASL画像の提示があった。顕著な局所性血流増加が認められた症例については、翌日、三日目にも検査を行い、ASL画像の時間経過による変化を追跡できた。もちろん発作時脳波も提示された。欲を言えば発作間欠時脳波と発作時脳波の起始や変容経過も見たかったが、時間が足りなかった。いずれ、血流増加箇所と発作時脳波所見の合致、ASLの広汎性や多焦点性などがありそうだ。次回の発表では、分かりやすい結果のみ以上の発表となる。発作時の波形とASLでの高灌流部位の関連は一対一ではない。今後の課題としては、ASLが陽性の発作や発作症状と、陽性画像所見に至らない発作や発作状態とを鑑別していきたい。直感では、短い持続の発作時間では、群発状態を含めて、ASL陽性画像をは得ていない。発作時間の長い患者においては、ASL検査は非常に有効、有用であり、ASL画像変容の確認は臨床検査の必須の選択肢の1つとなると考えている。

 

2016年1月より導入された、3テスラのMRI装置によりASLが撮像可能となり、患者さんへの充実したサーヴィスの一つを提供できるようになった。特に発作後のASLはてんかん病院ならではの臨床有用性がある。技師のデータが診断の助けになるよう、データを積み重ね、分析していきたい。

<臨床検査技師 原田早苗>


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