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抗てんかん薬

ETDD XVIII 2025 (ETDDてんかんの治療方法と診断技術会議第18回会議) プログラム発表・講義紹介 (1) Rogawski ME

ETDD XVIII 2025

(ETDDてんかんの治療方法と診断技術会議第18回会議)

プログラム発表・講義紹介 (1) Rogawski ME

2025/06/09 Drソガ

第18回ETDDのプログラム
セッションI:前臨床(段階のモデル開発)
前臨床モデルを作用機序に調和させる”特定目的適合性“
“Fit for Purpose”−
Matching Preclinical Models with Mechanisms

折角の最前線のプログラムであり、優れた講義、発表の幾つかを紹介していきます。

<はじめに>

今回のセッションIは4題です。今回の紹介は2番手、Rogawski MA(カリフォルニア大学Davis校・卓越教授)のタイトル、前臨床モデルを作用機序に調和させる”特定目的適合性“の講義、とします。

Rogawaski MAは先ず2025年4月10日付けのFDA(アメリカ食糧医薬品局)が、モノクローナル抗体とその他の薬品開発にかかる動物試験の条件を段階的に廃止するという発表を行ったことを冒頭で紹介した。https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-announces-plan-phase-out-animal-testing-requirement-monoclonal-antibodies-and-other-drugs?utm_medium=email&utm_source=govdelivery

FDAは、これにより「AIベースコンピュウター化」、「人体臓器モデル研究試験」と「臨床治験データ」とをテコにして、信頼度が高く速やかな、一方R&D(研究開発の訳でよいかな)費用と薬価も抑制しながら、患者により安全に治療を提供できる、とした。Rogawski MAは、この発表にあたりユタ大学Swingyard教授を鏑矢とするアメリカの抗てんかん薬ASMの開発77年を回顧するように準えて、2025年の展望を述べた。もちろん、制限時間がある講義内容構成に詳細な説明は求めなければ、理解のための最低限の知識として、てんかんケア仙台2024−1(第38集)、126ページの図表7:ETSP 「薬剤抵抗性てんかんの選択的作業過程」、Klein B(ETSP, 2024)https://panache.ninds.nih.gov/をご参照ください。なお、可能な限り忠実な紹介に努めた。

1 動物てんかんモデル(齧歯類)と発作モデルの解説

① モデル分類では、第I分類として、❶発作モデル(正常動物での発作誘発には電気刺激とけいれん誘発物質、反射発作への遺伝的  感受性の二つ)、❷“薬物抵抗性モデル”(「44mA&6Hz試験」と「フェニトイン/ラモトリジン抵抗性キンドリングラッテ」の二つ)、❸(発作)域値モデルをあげた。
② てんかんモデルでは、第一に(特発性)遺伝性を特別格として、第二に6種(獲得性キンドリング、誘発性反復性発作重積、外傷、腫瘍、感染、低酸素)を並べた。なお、独立区分に化学物質誘発性慢性脳波発作を置いた。
③ 遺伝子導入モデル分類では6種、チャネロパティ、GABA作動性異常、皮質形成異常と結節性硬化症、シナプス性(SYNGAP1)、脳発達性(CDLK5、PCDH19、LIS1)、代謝性にまとめた。一方、自発性発熱誘発性を傍らに置いた。
④ 発作重積モデル(電気的な化学物質誘発)を分類の四つ目に独立させた。

2 モデルから見た抗てんかん薬ASMの区分

新薬開発の現地平を基に、FDAが抗発作治療薬として承認した、1953年のフェニトインから2022年のガナクソロンまでの19種と治験段階にある4種の新薬候補を一覧にしながら、動物モデルとして使われた発作誘発ならびに抑制効果について、MES最大電撃試験、PTZペンティレンテトラゾル皮下注試験、キンドリング獲得などのいずれの動物実験が決め手となったかを示した。
加えて、MESでは、先ずにラコサマイドLCMの例で示し、また個別薬種類では6種(ナトリウムチャネル、AMPA受容体、広汎、欠神特異、(カンナビノイド、セロトニン性にかかる発達性てんかん性脳症での文献学的考察を披露した。
一方、最大電撃試験MESと患者での血中濃度との相関、非相関を紐解きながら、ペンティレンテトラゾール皮下注のマウスでの文献学的比較を披露した。

3 NMDA受容体拮抗薬、D-CCP-eneとRenacemide

他方、同じく特例披露として、1993年代に注目されたNMDA受容体拮抗薬D-CCP-eneの話題を提供した。同じ効果が期待されたRenacemideが2002年にカルバマゼピンの後塵を拝し、市場開発から撤退したことも伝えてくれた。

4 超選択性ナトリウムチャネルNaV1.6遮断薬Zandatrigine NBI-9211352

また、2015年に、中枢神経の大脳興奮性神経細胞にある特異的なナトリウムチャネルNaV1.6を超選択性に遮断する物質Zandatrigine(NBI-9211352)(またはXEN901)、新薬候補が開発された。ながら、Zandatrigineは最大電撃試験MESでは既存薬を遥かに超える結果を示しながら、治験第2相POC(概念実証)では既存薬を超える効果を見せず、開発は失敗した。

5 SCN1AへのノックインマウスA1783Vの挑戦

他方、新たな手法として期待された、ドラヴェ症候群に関係するSCN1Aの異種突然変異(A1783V)を有するノックインマウスの開発は、発熱試験では、いずれの既存薬も殆ど効果を示さなかった。ので、未だ先は見えない。

<結論>
  1.  77年となるユタ大学Swinyardで始まったMES、ペンティレンテトラゾル皮下注試験はvormatrigine、relutrigine(NaV)、そしてazutulkaner、BHV-7000(Kv7)などの新薬開発に鍵となっており、いまなお主力遺産であり続けている
  2.  6Hz試験も有益だが技術が難しく、ために研究所毎に結果が異なり得る
  3.  動物モデルは作用機序についてはバイアスがかからないので、新しい抗発作薬ASMの化学階層の発見と新しい作用機序の解明に決まって繋がっている
  4.  たとえば発作重積後などの慢性の持続性反復性発作SRSなどの慢性てんかんモデルは、技術的に難しく新薬の開発手段としては限られる
  5.  ノックインマウスなどの遺伝子導入モデルは臨床に有用な新しい抗てんかん薬群ASMsはまだ使い道を示すことができないでいる
  6.  若年欠神てんかんCAEへの可能性(GAERS、WAG/Rijなどの動物モデル)を除けば、特異なモデルと発作あるいはてんかん症候群との間に、ヒトのてんかんと一対一の反応はない
  7.  遺産手段と斬新な慢性モデルをも含む満ち足りたフルパネルにおいて特徴付けができるようになれば、新しい物質の”肖像画”を描く(識別する手段となっていく)のに有用となると言えよう

総じて、2025年4月1日付けでFDAが動物モデルでの実証試験を緩和しようとしているなかにあって、抗てんかん薬新薬開発における動物モデルの重要性は遺産、レガシー以上のものを示すことはできないということになる。(了)