・てんかんイーブニングセミナー 第三期第1回講義を開催

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「仙台市立病院救急センターでのけいれん治療」

 

イーヴニングセミナーEESBベーテルてんかんケア実践講義は2017年6月8日の開講以来、2019年第Ⅱ期までで、38回となった。7月11日に開かれた2019-第三期の第1回講義は第39回となった。

さて、ベーテルの新患の方々も時代とともに大きく変わりつつある。あちらこちらの病院で発作が止まらなかった患児者で占められた新患像は、この数年で発病したての患児者主役の姿に変わりつつある。今回は折もよし、救急外来、救命センターの先頭を走り続けている仙台市立病院の、脳神経内科部長樋口じゅん先生をお招きできた。当然、仙台市立の新しい救急ステーションでの、けいれんやてんかんの診断と治療、をセミナー講義のテーマとしてお願いした。

ご存知のように、仙台市立病院は2014年11月1日に新都心あすと長町に移転したが、巨大災害に対応できることまで目指す巨大病院の偉容を誇る。その特段の診療機能として仙台市の新政策医療5項目があり、そのなかに、①小児救急医療、そして、②周産期医療NICU/GCUの子ども医療の圧倒的な拡充がある。EESBは既に元小児科部長の高柳勝先生のご講義を頂戴している。成人の場合は、移転とともに仙台救急ステーションと名称を変えているが、救急センターは、ベーテル含めた外部から更に頼れる、そして気軽に頼ってよい、救急医療の即応センターという象徴にふさわしい。樋口先生の脳神経内科は神経救急疾患を受け持つので、てんかんである可能性も高いけいれんや意識障害の救急が非常に多いとのこと。なお、新しく③精神科疾患での身体合併症救急治療、④災害医療・感染症対策、⑤災害医療の拡充、をも仙台市の政策医療と定めている。

神経内科・脳外科病棟は43床ある。そのうち神経内科35床は脳卒中を中心に神経救急疾患を昼夜の隔てなく診る。また、急性期リハビリを提供する体制も整えた。なお、回復期リハビリや変性疾患の治療・療養、認知症の治療は関連する後方施設に紹介する煩瑣過ぎるであろう作業も課される。

樋口先生は仙台市立病院の神経内科の歴史をも披露された。陣容豊かに運営されているという外部の私どもの誤解はすぐに晴れ、平成7年は常勤1名、平成12年は5床に2名で、平成24年に漸く3名、平成31年に漸く4名となったことが紹介された。外目のひどい誤解と内情のご努力に聴講者全員が深く感銘し、深謝した。

引き続き、樋口先生はけいれん救急の具体を2症例を通して詳しくご説明なさった。第一例は、脳出血後遺症によるてんかん発作で救急搬送となった方の救急救命室ERにおけるけいれんとてんかん発作の重積治療のあり方を話された。たとえば、仙台市立で一般的に最も多い処置は、ダイアゼパム静注、ミダゾラムの持続投与、呼吸抑制に注意しながら要すれば躊躇わず気管内挿管、またレヴェティラセタム静注となっている。いわゆる旧薬群のフェノバール(現商品名ノーベルバール)やフェニトイン(現商品名フォストイン)はもはや選ばれない。処方薬は薬物相互作用の少ない薬が選ばれ、レヴェティラセタムが第一選択剤で、次にラコサマイド、カルバマゼピンが中心になり、付加的にクロバザムが選ばれるとのこと。

第二例は、東北大学神経内科学教室が開発したMOG抗体検査が陽性となったMOG抗体関連髄膜脳炎によるてんかん発作の紹介であった。意識障害では腰椎穿刺による髄液検査が欠かせないが、失語・見当識障害も示したので、無菌性髄膜炎が強く疑われ、ウイルス性と自己免疫性の両面から、即座に治療が開始された。この方には再発があり、最終的にはステロイドパルス療法を行い、再び回復している。搬送時の検査結果から瞬時に病因を予測し、治療を展開し、病因を特定していく、ベーテルでは何年に一度もない、ダイナミックな救急室の治療現場を垣間識る、滅多にない素晴らしい機会となった。

樋口先生によれば、救急でのけいれん重積の比率はおよそ5%とのこと。初発のけいれん発作の患者さんは回復していたら帰宅としているが、単身赴任者や学生寮を利用しているなどの一人暮らしの方については一泊入院を提供して安全を図るべく細やかに配慮する。また、発作波が確認されない症例もあり投薬を開始しにくい場合も少なくないので、投薬開始よりも積極的に長時間脳波モニタリングを勧めている。仙台市立のように恵まれた病院でも完璧な診療を提供するには、常にマンパワーの問題が立ちはだかる。設備が充分でも、たとえば検査を担当する技師数には限りがあり、けいれんやてんかん発作の看護ケアに折角に腕を挙げた看護師に恵まれたとしても、すぐに配置転換でいなくなる。そのなかで、医師は救急患者を診るだけで精一杯。

まして、自閉症などの障害を抱えた患者さんのてんかん発作での脳波検査はひどく苦労する。樋口先生からは、逆にベーテルではどうしているかと質問がなされた。聴講者からは、ベーテルの場合、自閉症を抱える患者さんが居やすい雰囲気がある。受診を繰り返すうちに繰り返しながら脳波検査ができるようになっていくなどと回答された。

仙台市立病院は救急医療の最前線におりながら、てんかんを抱えた患者さんの困難にも常に親切に緊急に対応してくれる。どこからも断られてしまう、てんかん以外の余病併発時も、最後の砦として開門してくれる。実にありがたい。樋口先生をお招きできた今回の講義から、その裏側の事情、救急医療の現場で活躍する医師達の疲労困憊の現状まで窺い知ることができて、すばらしい講義となった。

ベーテルはベーテル、市立は市立、のお互いの役割分際をしっかり繋いで、共にてんかんケアに貢献しているという誇りを同じくしたいと希う。

海野美千代


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