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社会復帰科

1992年の開設時、ベーテルの入院病棟ではベッドで寝て暮らす療養生活ではなく、運動、ミーティング、園芸、音楽、製作、調理、星空パーティや盆踊りなどの四季折々のイヴェントに全員で楽しく過ごすことを目標に、患者さんは規則正しい週毎の日課に基づく活発な入院生活を送っていました。この時代、各地に遠足に出かけたり、野球大会、グリーンピアの坂道を皆で歩く、芋煮会を開くなど、思い出一杯の、普通の病院ではとても考えられないようなことが平気で行われていました。

ベーテルの建物が作業療法室、小さな体育館を備えて、作業療法士の入職を待ち得て、宮城県第3号の精神科作業療法認可(現在は第195号)を取得したのは開設1年10月後の1994年8月です。これまでの病棟の治療環境にいわゆる診療報酬的色合いが組み込まれ、てんかんのリハビリテーションが自然体の牧歌状態から、徐々に資格由来療法活動も組み込まれていく病棟生活日課となっていきます。それは他方では、担当看護師を軸にした個別MDTBに、臨床心理士、神経心理士、言語療法師などが果たす役割の高まりがあります。

ベーテルでの作業療法は身体疾患の作業療法も含まれますが、殆どがいわゆる精神科作業療法の特徴を豊富化させたものです。てんかん作業療法と呼び習わします。「皆と一緒に活動し、他人から教わり、集団から学ぶ」という集団力学、医者や看護師からの説教ではなく同病の仲間との交流こそが最大最強のてんかんの学習効果です。

ベーテルのMDTBでは作業療法士の役割は更に期待され、作業療法は外来患者に作業療法を継続的に提供することとなりました。てんかん専門医療の成果を本格的な外来ケアに繋ぐために、特定外来ケアを具体化しました。入院期間中には退院後の具体的な生活設計まで図り、培われたソーシャルスキルのレヴェルアップで日常生活を安全に楽しく送る。社会復帰科は作業療法部門を中心に4人体制でケア伴走に努めています。

目次

  • 社会復帰科概要
  • 社会復帰科の現在に至るまで
  • 作業療法部門の業務紹介
社会復帰科概要

てんかん作業療法は、入院の患者さんのみならず、外来の患者さん等にも幅広く実施しております。基本は集団での活動になります。プログラム次第で患児者さんによって、選択式もあれば、作業療法士が意図したグルーピングの活動ともします。

作業療法Occupational Therapy はオーティーOTと呼ばれています。日本語訳は“作業”ですが、元々のOccupationの意味は“職業”です。作業療法の対象となる方は、身体、精神、発達、高齢期の障害や、環境への不適応により、日々の作業に困難が生じている、またはそれが予測される人や集団を指します。また、作業には、日常生活活動、家事、仕事、趣味、遊び、対人交流、休養など、人が営む生活行為と、それを行うのに必要な心身の活動が含まれます。

作業に焦点を当てた実践には、心身機能の回復、維持、あるいは低下を予防する手段としての作業の利用と、その作業自体を練習し、できるようにしていくという目的としての作業の利用、およびこれらを達成するための環境への働きかけが含まれます。

また、ベーテルの作業療法は「てんかん作業療法」と定義づけられ、またそのように呼び慣わします。てんかんの作業療法は主にヨーロッパのてんかんセンターに発祥し、百数十年の歴史があります。身体的能力、作業能力、また特に興味や関心、意欲度合い等を前提にしながら、てんかん特有の日々変化する発作症状や意識状態、活動度などを評価します。最近の発作回数や処方内容の変更の情報を元に、療法中の発作状態や副作用には特に気を払い、療法中は患児者さんの活動性、眠気や情動の変化に気をつけ、療法中の安全を図ります。

社会復帰科の現在に至るまで

社会復帰活動で特記すべき歩みに「単身アパート生活者支援活動」(1996年)があります。1998年に、「てんかん専用」のグループホームが開設されます。てんかん病棟での社会復帰訓練活動は数名の篤志家社主による院外での実地作業訓練でも支えられ続け、また入院者が障害者センターでの職業訓練の便宜があった時代もあります。

世は次第に息苦しく狭苦しくなり、入院という形態でのこの種の実際的訓練の道は閉ざされる時代になり、患者は院内に閉じ込められるようになりました。てんかんのための生活・就労施設ハンス・バーガー協会がこの手の先進努力を補うようになりましたが、社会復帰の医療モデルは制度的には基本的に排除されるようになりました。

一方、精神科志向の作業療法士は志望も少なく、ベーテルの作業療法人員は少数に制限されます。完璧なてんかんリハビリテーションとハビリテーションにはMDTBあってはじめて可能になるもので、人手を割こうとしない医療制度では無理ですが、世の中はなかなか賢くなっていますので、他山の石となって知らぬが仏の思考を止めることです。工夫次第で何とかします。複雑な活動や作業訓練の提供により、てんかんのハビリテーション、リハビリテーションの幅が広がります。

入院前に社会生活がどんなものだったか、どんな困難があったか、ぶちあたった最大の難題はなんであったのかなどを重点優先的に解明し、退院後には困難を解消できる社会復帰を幅広くサポートして、解消していきます。それぞれの患者さんの家庭でのご都合を調整し、作業所や職場、相談・就労移行支援事業所との連絡や情報を共有し、共に具体的な解決プランを作り、具体的に助言し、実際の支援を実行します。近時、数年は退院時総括に従い、外来でのリハビリ面談・診察を日常業務に格上げしました。

作業療法部門の業務紹介
入院患者のてんかん作業療法

先ずは何よりもてんかんの当事者たちが陥りやすい発達心理的、家庭的、対人、社会、職業的困難の理解を得心する「てんかんの学習」を徹底します。その上で、入院患者の日常生活のスキルを構築します。日々の生活リズムを安定させ、それぞれに適した自律・自立訓練を行います。これには、精神科的アプローチ、ライフスキル・トレーニング、集団作業療法の3つが含まれます。ご家族・ご親族などへの「てんかんの知識と情報」の学習プログラムの提供は絶対に欠かせない前提です。支援関係者に広くケアギヴァー・トレーニングプログラムを具体的に仕組み、進捗状況を確認していきます。

外来患者のてんかん作業療法

外来での作業療法は週1回から3回ほどになります。家庭などの生活の場、活動の場、作業所や仕事場、グループホームなどでの悩みやストレス、困難を積極的に話し合います。それぞれの現場との情報共有を図り、日程を定めた問題解消プランを作ります。必要であれば、面談やコンディションチェックを行い、速やかにドクターやナースに伝え、助言や指示を受けます。作業療法はまたとない間接的に欠かせない機会であり、予防なのです。身体的なリハビリや、日々のトレーニングメニューも提案され、引き続きチェックします。

外来リハビリテーション管理

入院中に周到に仕組まれた退院時のリハビリ計画の進捗状況を確認していく作業です。ために管理と呼びます。復学、出席や欠勤、求職活動、就労継続支援などの進捗状況を確認します。

なお、通院中の患者さんで、なかなか就職や社会復帰に至らない、または自宅障害者となってしまっているなどの社会的困難に陥っている方は、外来ナースと主治医の指示により、神経心理士あるいは作業療法士などとの面談を予約します。一般的な助言に加えて、問題毎に適切な支援相談窓口を紹介します。時に、お住まいの県市町村などの役所や担当保健師等へ紹介します。もちろん、その後の結果を受けて、更に相談内容を煮詰め、更に適切な支援者を探します。

(有賀穰)