てんかん専門病院ベーテルにおいて、認知機能の検査や精神、心理的な評価を日々行っています。知的能力や認知機能の特徴を理解することで、てんかん診断の補助材料となったり、てんかんの治療やリハビリテーション、社会復帰を目指す方にとっての重要なアセスメント情報となったりする場合もあります。
てんかん治療や闘病は長期戦となる方が多くいらっしゃいます。日々の生活での家族の関わり、学校や職場、地域などの他者との関わりなど、てんかんの患者さんは多くの人と繋がって人生を送っています。病気に対する考え方や受け入れ方は様々です。一方で、受け入れられず拒否せざるを得ない心境もあるかもしれません。差別や偏見などがつきまとう場合もあります。他者や社会との関わりが上手くいかず心を痛めたり、ふさぎ込んでしまう方もいるでしょう。そのような方の心理的な支援もまた、神経心理科の役割であると考えています。
目次
ベーテルの神経心理検査は、当院に入院される方、外来で通院される方に広く実施しています。患者さんそれぞれの病態や特徴が異なりますが、一人ひとりの患者さんに合わせた検査オーダーが組まれ、てんかんは発作だけが病気や症状ではないという考えに基づき、目には見えない特徴や障害、社会で生きていく上での制限、もしくは本人や家族が見えていない長所や得意な能力など、てんかんの診断、治療やリハビリ、社会復帰など幅広い分野に情報を提供できるように検査が実施されます。
単純な数値としての結果だけでは測ることができない、その患者さん毎の特徴や傾向を、結果の説明の際にはできる限りお伝えするように努めています。
ベーテルには、てんかんという診断を除外するために受診、入院される方もいらっしゃいます。実際の診断がどのようなものになるとしても、その方個人の認知的特徴や心理的傾向など、ベーテルを離れ次の段階に進む方々にとっても、有益な情報となるよう検査を実施し、結果をお伝えしていきます。
現在は心理士1名が担当しています。心理士も専門が様々に分かれるため、それぞれの専門分野を発揮して、検査や相談の業務を行っています。過去には言語聴覚士(ST)が神経心理科を担当していた時代もあり、検査だけでなく言語聴覚療法を行っていたこともありました。少ない人員での業務ではありますが、他科と協力しながらチームとして働くことが、ベーテルの神経心理士の特徴です。
入院患者さんの病態や特徴、または入院の目的に合わせて検査を実施します。診断や治療、リハビリの流れの中で、検査の内容や量が変わっていきます。
外来に通院される患者さんに、目的に合わせた検査を実施します。退院時に、外来で実施する検査の予定が計画的に組まれることもあります。
担当医の指示や患者さん、ご家族の意向などで、検査とは別に個別の相談支援を行う場合があります。てんかんは発作だけが問題ではないので、家族や対人関係、学校や職場など社会生活を送る上での困難が少なからず発生します。時期や個々の事情に合わせて、必要で可能な範囲ではありますが、お力になれるよう実施しています。
てんかんケアの普及啓発の一環として、カーレ仙台が主催するてんかん医学市民講座等の外部向けの講演会で、検査結果だけに限らず、てんかん患者さんや関わる支援者の方への情報を提供しています。
(阿部佑磨)
「検査や相談だけでなく、病院での日々の患者さんとの関わ りから、自分も癒されてエネルギーをもらっていることを実感します。たまたま、てんかんという病気がきっかけで関わりを持つことになる患者さんやご家族との対話が好きだからこそ、この仕事を続けています!」