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MACB

138 th MACB-ⅠCase Study (28 Feb, 2025)

138 th MACB-ⅠCase Study
(28 Feb, 2025)

報告 栄養科 勝山祥子

第一部 要約
☆1 症例サマリー
・ 症例      :女児、小学生
・ 診断      :小児欠神てんかん
・ 基礎疾患    :なし
・ 成因関連    :なし
・ てんかん発病  :X-1年(X年当院初診)
・ てんかん発作型 :定型欠神発作
・ てんかん症候群  :小児欠神てんかん
・ 大脳MRI所見 :異常なし
・ 発作時脳波 :全般性3Hz棘徐波複合
・ 間欠時脳波   :全般性3Hz棘徐波複合、右中心頭頂部鋭波
・ 入院理由    :診断確定、治療導入
・ 発作抑制予測  :薬物治療による効果良好、今後効果の確認をする。
・ 生活上昇期待  :発作抑制による生活面での安全確保、学習面の向上。
・ 症例検討理由  :初診時と家族の感じている発作頻度の不一致
・ 外来看護管理   :内服状況・発作状況の確認
・ 地域支援役割   :なし
・ 身体的合併症   :なし

☆2 てんかんケアのキーポイント
・ 未治療である。精密検査を進め、確定診断作業を行う。
・ 確実に内服するために服薬指導を行う。
・ 薬剤の効果判定のため、確実な発作の観察と記録を行う。
・ 発作のために自信を失わないよう周囲のサポートの強化を行う。

☆3 結論
・ 小児欠神てんかんと診断し、抗てんかん薬を導入した。
・ 入院検査で治療前の発作状況を確認した。
・ 入院中に発作ご家族と共有し、今後の治療効果判定(発作抑制が得られているか)につなげる。

第二部 症例検討
★1−1 司会報告文(勝山祥子)
てんかん病歴
X−1年冬とX年夏に1回ずつ、10秒ほどぼんやりとして動作が止まっている様子を家族が目撃した。その後、友達や先生にも突然動作が止まり眼球上転することがあると気が付かれるようになり、X年冬に当院初診となった。初診時の問診では、家族が認識する発作は週3回程度であった。
初診時脳波検査所見
脳波検査では、過呼吸賦活開始30秒後から、検査終了までの20分間に18回の欠神発作が出現した。
初診時方針
小児欠神てんかんと考えるが、初診までに認識されている発作頻度と、初診時外来脳波検査で確認された発作波出現頻度の臨床的一致を見ないため、入院での長時間ビデオ同時記録脳波精査を行うこととした。
入院経過
長時間ビデオ同時記録脳波で、1日に30回以上の定型欠神発作が確認された。睡眠中も10秒未満の発作波に伴いうっすらと開眼する発作が見られた。バルプロ酸ナトリウム(VPA)を導入し、今後外来で調整を行う。

★1-2 各科からの報告                                                               

外来看護(村上悦子):治療が開始したので、確実に服薬し、万が一目撃されれば発作表に記入していただく。リズムのある規則正しい生活、学校生活となるよう祈る。眠気やふらつきがないかなどを観察し、VPA長期連用に伴う食欲や体重の変化に気をつける。

入院看護(平澤智美):発作の明確な自覚はなく、他者の目撃による発作確認が必要と考えられた。観察精査結果と治療薬導入の開始により、治療効果判定のための、再度入院となった際には、服薬状況と目撃発作の再確認を行い、また生活や学習の様子なども含めて丁寧な看護評価と助言を行いたい。

入院生活支援(砂金七枝):特別の支援を必要とはしなかった。ご両親とご一緒に発作表記入ができるようになれば、発作消失を自分でも分かるようになるかもしれません。

検査(榎本僚太):MRI検査は脳構造異常なし。頭部ASLでは前頭葉で右が高灌流の左右差を認めた。誘発電位検査では光反応の過敏所見なし。脳波は、初診時に過呼吸賦活で発作が誘発されたが、長時間ビデオ脳波検査中は、過呼吸賦活なしでも5−20秒の欠神発作が確認された。なお、欠神発作以外の発作は確認されなかった。10秒以上の全般性棘徐波複合の出現回数は、治療開始前と初期開始量の薬物導入後1週間のものでは、著明な改善を認めなかった。

薬剤(伊藤嘉子):未治療で入院。精密検査後に、VPA 200mg/日が導入された。急性期の副反応はなかった。1週間後の脳波検査結果では改善を認めず、退院日からVPA 400mg/日へ増量した。小学生となっているので錠剤を問題なく服用できた。

栄養(勝山祥子):栄養状態・成長に関する問題点はなし。VPAが開始となったことから、今後は食欲と体重の増加に留意し、また血中脂質の高値化がないよう観察していきたい。

医事(佐伯さとみ):自治体により対象年齢や自己負担額に違いがあるが、本例は医療費は子ども医療費助成を受けている。これは入院治療でもてきようされる。通院治療でも適用される。こども医療費助成制度の対象年齢から外れてからは自立支援医療(精神通院医療)を案内することになる。

神経心理(阿部佑磨):心理検査は薬物治療開始前に実施した。知的能力は概ね年齢相応の水準であるが、言語性項目に苦手さが見られた。検査中にも欠神発作により手の動きが止まる、計算ができなくなる様子が観察され、検査結果に影響があったと思われる。学力の向上などにもつながるため、早く発作が止まって自信を失わないように支えていきたい。

社会復帰・作業療法(有賀穰):作業療法には付き添いの家族とともに参加した。初めての環境に慣れるのには時間が要した。欠神発作が抑制されていくことで、今後の家庭、学校などで活発な生活を送っていけるはずです。

 

★2 主治医コメント
主治医(荒谷菜海):初診時の問診で得られた発作回数が小児欠神てんかんとしては少ない印象であったが、長時間脳波検査により教科書通り1日に数十回の発作が確認された。初診時外来脳波検査では記録の前半に過呼吸賦活が行われているため、短時間により多くの発作が記録された。入院中、VTRで確認された発作の際の特有の微妙な表情の変化を、ご家族とともに確認でき、学習を深めた。退院後は、学校などの家庭以外での活動中に発作が気づかれるか、教師の方々とお母さまと発作がない、あるらしいなどの情報を収集し共有していくことが大切となる。
短日の検査入院期間では薬物治療効果を判定することはできないので、数ヶ月後の再検査で欠神波の出現頻度、発作波の持続時間などから抑制度合いを比較していく。なお、右中心頭頂部の単発のローランド波形に極似する発作波の消失も追跡していく。
★3 座長総括
症例は、欠神発作に気づかれた小学生である。「あれっ!おかしい」と時折気づかれてから1年以上の時を経て、頻繁に目撃されるようになり受診に至ったケースである。初診時より脳波検査時の過呼吸HV賦活により欠神発作波が出現した。入院による長時間ビデオ同時記録検査では、より詳細な異常所見の経過が確認された。今回の入院で精密診断作業を行い、薬物治療が開始された。薬物導入開始の初回量では期待された発作波は減少しておらず、投与量の増量による発作改善の経過を負うことになる。自覚できる発作症状ではないので、他者が気づける目撃発作に頼ることになる。ナースはこの事情に通じながら発作表の紙背を読み取る力が必要となる。そう遠くない時期に再度精密検査入院が計画される。ケアギバーとなるご両親さまは、発作に周囲が反応するために不安に陥らないよう心配りすることになる。彼女が理解できるようDrの説明を、欠神発作や服薬が大事となるようご両親さまの言葉に置き換えてお話ししていくことになる。数年間は患う病気となりますが、高学年化に伴う発達過程をDrやNsと一緒に見守り、順調に学校生活、社会生活を送れるよう支援もすれば励ましてもいきたい。    海野美千代

 

 

第三部 症例データ
*1 大脳MRI

*2 脳波所見

*3 欠神発作時脳波所見

*4 欠神発作波(10秒以上持続)の出現時刻と頻度