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ベーテルトマト、初物

ベーテルトマト、初物

2025/07/04

 

本日の昼食に、ベーテルトマトが五つ添えられていた。添え紙に「初収穫」とある。五つとも別の品種だ。

この立派なトマトは、実は、ベーテルの屋上で栽培されている。写真でその様子を示した。病院の屋上でトマトを栽培しているって、嘘でしょう。いえ、そうなんです。いや、実は仮住まいの嘘だったんです。いつの間にか、嘘が本格的に事実となってしまったのです。

何でそんな面倒なことを言い始めるかと言えば、トマト栽培は生活療法や作業療法の一つとして始まりました。説明すれば長い話になりますが、発作がなければ、患者さんは何でもできるのです。園芸療法の最大の特徴は、草花や野菜は半年ものです。種を蒔く準備から収穫するまでが半年で、花が咲けば2月で収穫できます。この期間は、牧歌的な昔流の精査・治療吟味に1−3月が与えられます。その大半が、園芸療法で月日を数えることができるのです。もっともそんな時代はもはや遠の昔になったのですが、ADL評価と運動を含む活発な生活療法からみて、第一選択薬の薬効評価を含めた諸々の手順が、培地に種を埋める、発芽し苗に育つ、花が咲き実がなる、大きな実に成り収穫する、に美事に合うのです。割を食うのが秋の後始末と春の準備の期間で、こちらはクリスマスのチューリップの鉢作りなどの地味な期待の期間となります。

ひどく面倒な話ですよね。てんかん発作やてんかんの診断や治療に関係しないのではないんですかと、「ひげ爺」登場。いえいえ、そうではありません。薬物治療には踏まなければならない手続きがありまして、薬物治療での処方漸増計画と定常血中濃度の関係から発作が抑制されたか、脳波改善はどうかという判定には重要な二つのメルクマールがあり、特に発作が難治に経過する方は1−2週間の検査入院では結果は全て後の物種となる現在主流の方式を避けて、慎重で最も合理的な初期導入期間を平均すると、実に奇妙に2ヶ月なのです。2ヶ月となれば、生活支援療法やリハビリプログラムがほぼ完璧に出揃います。外来ケア管理の実際のあり方も相当に具体的なレヴェルに昇格します。

ちょっと待ってと、ひげ爺。話はトマトでしょう。はい、そうです。(苗に育てるまでは省略して)トマト苗を植え付けて、実になるまで2月です。その間だけで最も大事なのは水遣りなんです。こんなに立派になったのは、特に6月に入ってからは水遣りが大仕事なのです。

実はベーテルの屋上では大変なことが起きていたことが分かりました。今風には、「発覚」と言います。嫌な言葉ですが、当方の気に触って今でも不機嫌となる「発覚」という言葉は、さる大手のインターネットのプロヴァイダーのコールセンターの事務所員がお遣いでした。二十数年以上前、家族の支払いが当方の口座名ではダメという連絡でした。

さてさて、実は、この3年ほどの期間に、屋上の水栓が充分に働くなってきていた可能性があるとのこと。高架水槽の水圧のみが頼りで、勢いを失いながらの水遣りとなっていたもよう。ちょうど、山の水源に頼る一軒家の水引パイプが詰まってきていたというような話です。調べてもらうと、給水補助加圧用のポンプが作動していなかったのです。2009年製でいわゆる耐用年数を超えているとのこと。

実は、トマト栽培の担当者が変更になる時期にあたっていたようです。屋上の水遣りもトマトが終わると、冬場は春苗の育成期間は大量の水遣りが必要でない時期にあたり、屋上水栓の不調に気づけなかったようです。

実は、現場の仕事では、完全停止でない場合などでは、この種の不調が不調と気づかれないままとなることがあります。ベーテルも30年を超えて、建物や装置備品の老化や劣化が進んでいます。大事な医療管理に老化、劣化が進めば、大変なことになります。その手の不調や不具合は、スタッフが質を保とうと無理を重ねるので、過重労働という負担になりかねません。そして、患者さんには不便な代物となります。

この立派なトマトは、実はプランター育ちで、実は自家製の、自然栽培の、実は非常な人手を食うトマトなのです。何故って屋上に畑があるのではなく、プランターで育てているからです。言葉と目を換えると、実は今風のモダンなガラス温室でもなければ、最新の水耕栽培プログラムでもありません。人手なので、実は非常に高価なトマトとなるのです。

人手を言い出せば、切りがありません。トマトを立派に育てるに、朝から晩までの手間暇を一つ一つ数え上げていくと、切りがありません。たとえば、人知れずの作業では、自然に成るだけ成らせるのではなく、粒を揃えようとすれば、摘芽と摘枝、つまり剪定作業が怠れません。当方は趣味の園芸であって商売しているのではないので、実は自然に成らせるだけの方法を好みます。これをボウボウ園芸と言います。NHKの素晴らしい番組、趣味の園芸からはいいことを一杯学べますが、訳知り顔を気取りたくなくて気張りません。疲れないようにあるがままを楽しみます。だから、農家にはなれません。また訳を知ってしまうと、時たまに出逢えた野花はそのままお会いするのが楽しみで、ご出身、ご出自まで知ろうと欲張れば、野山の気分を削がれてしまいます。突っ込まず楽しみます。

今回のベーテルトマトは、とんでもない「実は」話となりましたが、実は実は、もっともっと、「実は」はあるのです。ベーテルトマトを昇格させようとすれば、農家にならざるを得ません。新手のしたり顔の農業会社の現実構想を語る能力は年老いた当方にはありません。あるいは、その種には関心がありません。一方、増えていく休耕田の数を数えていくと、その手の関心には目が向き、頑張って来られたはずなのにと哀れみながら、当方も同じ運命だなと感じます。園芸も農業も私のお仕事ではないながら、昨年の「夕べの集い」では障害を有する方々をお雇いするソーシャルファームの先駆的苦闘を学びました。新しい時代を垣間見ることができました。

このベーテルトマト、実は今はベーテルトマトではないのです。ハンス・バーガー協会HBAに委託してのベーテル園芸班の作品なのです。この実は、は、ベーテル入院病棟の社会復帰支援科の管轄でありながら、2、3ヶ月の治療吟味入院患者さんが、よほど退屈なさっている屈強な若者を除き、参加することはなくなりました。ハビリテイトしたハンス・バーガー協会のベーテル園芸班のお仕事に代わりました。本来のリハビリテイトの目的も代替わりしました。

実は、大分前のその昔、屋上では夏祭りを開いていました。いまや屋上空間はすっかりと閉ざされ、入院患者さんが屋上風景を見ることはありません。型式通りの作業療法では、屋上で入院患者さんが登場することももはやあり得ません。

実は、入院病棟の奥の扉も昔は開放されていました。ベーテルは閉鎖病棟ではありませんが、一般病棟より遥かに自由に外来に出入りできます(新型コロナ感染防止対策では不自由が極端となりましたが)。入院患者さんが多種多様、多彩化し、病棟奥の扉は遂に開かずの扉となりました。恰も、一般病棟のように、入院患者さんは完全に病棟に閉じ込められました。敷地に恵まれて園庭まであれば、別の快適な空間を楽しめて、あたかもサナトリウムのように素晴らしいベーテルであったでしょうね。

実は、まだまだあるのです。入院病棟には困らないほどのベランダがあり、息抜きもできよう庇(ヒサシ)も備えており、食堂ホールの大窓も開錠されていました。いろいろな患者さんがおられて、遂に閉鎖されて、開かずのベランダとなりました。このため、ベーテルも恰も一般病棟と同じとなりました。

覚えてはいないのですが、もしかしたら病室ベランダにもトマトを植えたことすらあるかもしれませんね。訳は簡単です。毎日様変わりするベランダトマトは、実は大忙しです。史実だったかもしれないそんな時代があったことを語ることができるかもしれない記憶力があるスタッフは、もはや誰もいないのです。

(Drソガ)