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・てんかんイーブニングセミナーEESB2020第一期第2回を開催

発作波検出困難例での脳波VTR検査の有用性

EESB2020年第一期、2回目は上記のテーマで、てんかん専門病院ベーテル臨床検査技師で検査科長の原田早苗が担当した。今までのEESBや市民講座でも脳波検査、特に長時間脳波モニタリング検査の重要性は語られてきた。今回の一番の成果は、目に見える数値として、長時間脳波モニタリングの有効性を示すことができたということだろう。座長のDrソガは、今後まとめていくべき課題を確認しながらも、今日が長時間脳波モニタリング検査の第一回目であるという話を出していたことも印象的である。以下、講義内容に沿って報告する。

 

まずは、てんかんの診断についての基礎知識として、従来の「24時間以上の間隔で2回以上の非誘導性(反射性)発作が生じる」という定義の説明があった。また、実際に検査技師やDrが見ている発作の波形の説明があり、鋭波(シャープ)や棘波(スパイク)、棘徐波複(結)合(スパイクアンドウェーブコンプレックス)などが提示され、普段耳にする機会もある専門用語の解説が促された。

 

本題はここから。てんかんの診断において重要とされている脳波検査において、てんかんの証拠とも言えるてんかん性放電(発作波)が検出される割合は、現実的にどのくらいなのだろうか。2019年の1年間における数的データを原田氏が示した。なお、以下の数値、データはベーテルの岩沼本院、仙台駅前クリニックを合わせたものである。

初診も含め、外来で実施される30分の、いわゆるルーチン脳波で発作波が検出される割合は、1回目では約50%で、発作波が出やすい睡眠時も含め、2回以上実施して80%の検出率となる。とはいえ、時間の限られた外来でのルーチン脳波でも、発作波が検出できない患者さんも多くいることが示された。

そもそも脳波検査にはいくつかの種類があり、ベーテルで行われているものは、覚醒や閉眼、睡眠、光や過呼吸などの賦活刺激で行うルーチン脳波と、光や色、図形などの刺激による脳波検査、あとは入院時に行なわれる長時間脳波に分類される。ベーテルでは、現在は病棟で5台の無線脳波モニタリング装置が活躍している。

話は核心に近づくが、2019年の新患患者数は234名で、うち今回の統計データの対象となったのは187名。そのうち初診時のルーチン脳波検査で発作波が検出できなかった(てんかんの証拠がつかめなかった)のは93名で、約半数が対象となった。その93名のうち、睡眠時の脳波に発作波が認められたのが65名であった。発作が検出されなかったのは約1/3の方になる。発達障害や年齢が幼いとの理由で服薬ができなかった、検査が通常通りに実施できなかった、という検査場面での実情が説明された。このデータから、睡眠時においてより発作波の検出が高いと見ることができ、脳波検査時にしっかりと睡眠の状態が確保できていることが必要である。これが、長時間モニタリング検査の重要性の理由の一つである。

ここで、初診で詳細な診断に至らないために、岩沼本院に検査入院になった患者さんが187名中で124名であり、光過敏の傾向がある患者さんなどに特有の、光や図形、模様による賦活刺激の脳波で発作波が検出される割合が25%であるとの結果も併せて示された。

本日のメインテーマでもある、初診時に発作波が検出されず、入院による長時間脳波モニタリングで発作波が検出された割合であるが、93例中36名で、約38%であった。

本講義ではここで、6名の症例をもとに実際のデータが示された。座長からは更なる症例検討が必要との指摘もあり、各症例の詳細は割愛するが、いずれも初診時にルーチン脳波検査では発作波がつかまらず、入院での長時間脳波モニタリング検査において、発作波がつかまった事例であった。

それぞれの事例において、検査実施の困難さがあったり、治療や服薬の量にも違いがあったりと、統計的な信頼性に関する会場からの質問もあったが、直近の検査入院でも3日間も長時間脳波モニタリングを実施するという、以前にも増して発作波をつかまえよう、可能性を少しでも上げようという、てんかん専門病院ベーテルならではの方針や、膨大な脳波データを隅から隅まで眺める臨床検査技師の苦労など、本発表における数値化されたデータは貴重なものであり、更なる検討への第一歩であるとまとめられた。

 

ベーテルでは、発作波や発作時脳波という絶対的な証拠を手に入れ、患者さんに最適な薬の選択や治療方針の確立を目指して、臨床検査技師が日夜検査を実施している。本日の講義を第一歩として、本日は触れられなかった、初診で発作波がつかまったグループや、どちらとも言えない所見が出たグループとの比較をすることで、更なる深い理解をすることができる。また、睡眠賦活の有効性や長時間モニタリングにおける覚醒‐睡眠の影響など、今後検討していく課題が座長のDrソガから提案され、締めの言葉とされた。

日々検査や看護など、てんかん患者さんと向き合る我々職員にとっても、実に興味深い話であり、同時に情報の積み重ねが、後に重要になってくることを再確認させられた。結果としてよりよい治療やケアなど、患者さんのためにつながっていくと信じて、日々の職務にあたっていきたい。最後に、余裕などあるはずがない忙しさの中で、本日の講義をまとめ上げた原田氏に、盛大な拍手を送りたい。

阿部 祐麿