6月27日(木)、てんかんイーヴニングセミナーEESBベーテルてんかんケア実践講座2019-第Ⅱ期第5回講義が行われました。今回のテーマは「医療費と診療報酬制度を知る」です。
てんかん診療に限らず、医療機関を受診した際に我々が支払う医療費は、どのような仕組みからなるのか。医療費にかかる各種助成制度を利用すると、どのようなメリットがあるのか。診療報酬制度ってそもそも何?医事スタッフが行なっている受付、入力、会計、カルテ管理や書類、レセプト請求などの各論に入る前の大前提の講義となりました。
医療費とは「医療機関での治療にかかる費用のこと」を意味します。医療費は日本国憲法第25条「国民の生存権・国の社会的使命」にある社会保障が根源となります。そしてこの医療費を受けるために「誰もが必要な時に適切な医療を平等に受ける権利を保障する」医療保障制度があり、この医療保障制度の基本となるものが「医療保険制度」となります。医療保険は大きく分けて「国民健康保険」、「社会保険」、「後期高齢者医療保険」の3種からなり、日本では、皆がこのいづれかに加入して医療を受ける国民皆保険制度をとっています。日本以外にも国民皆保険制度はフランスや韓国でも取り入れられているそうです。
次に公費負担医療制度のお話でした。ベーテルの外来通院患者の約半数が利用している自立支援(精神通院)医療の歴史は、精神衛生法から始まり精神保健福祉法へ、そして2013年4月から障害者総合支援法の中に分類されました。所得によって一月の上限額が設定され、通院医療にかかる医療費が原則1割負担となる制度です。また、乳幼児医療費助成制度では、仙台市・名取市・岩沼市を比較して各市町村でどのような対象年齢や自己負担が発生するのかが説明されました。いかに上手にどの制度を利用するか、患者さんへのメリットとデメリットはなにか。その時、その時で、患者さんにとって一番適した制度の説明をしていけるよう、更なる医事スタッフの情報収集力と知識向上が必要だと感じました。
最後に、診療報酬についてのお話でした。診療報酬は点数で表し、1点を10円で換算します。医療機関を受診した際、患者さんは医師との診察をし、必要があれば検査や処置が行われ、お薬を処方してもらうための処方箋が発行されます。これらの行為は、先ほどの診療報酬で点数が決められています。算定できるものとできないものがあります。医事スタッフは計算を行い、健康保険での自己負担割合に応じて患者さんに請求をします。残りは加入している保険者に請求し、数月後、医療機関側に支払われます。この診療報酬は2年に一度見直しが行われています。
国が決めた診療報酬制度と、医療機関側、そして患者さんの求める医療の矛盾は年々大きくなるばかりです。来年2020年4月は診療報酬改定の年となります。改定で41床の精神科のてんかん専門の医療機関にメリットとなる点数はつきません。これからもそうでしょう。ただし、マンネリ化せず、医事スタッフは点数本とにらめっこをするのです。医事スタッフは、医療機関の経営を豊かにできるか、一方で患者さんの負担をいかに軽減できるかの両極端の中心にいます。点数や、お会計について不明な点があればお気軽にお声がけ下さい。国が決めた診療報酬制度が、少しでも患者さんのために豊かで適切な医療を受けられるものとなっていくことを切に願います。 <加藤千春>