6月13日(木)、イーヴニングセミナーEESBベーテルてんかんケア実践講座2019-第Ⅱ期第4回講義が行われました。今回のテーマは「脳波検査以外の神経生理検査の実際」です。日本光電、医療機器事業本部・事業企画部、佐野仁脳神経課長による誘発電位検査の講義となりました。
てんかん専門診療では脳波検査が主体ですが、脳波以外にも神経生理検査と呼ばれる検査が幾つもあります。「誘発電位検査」と「針筋電図検査」の二つに大きく分けられます。なお、ベーテルではALSの診断に必須とされる後者、針筋電図検査は実施しておりません。ベーテルに特徴的なのは、数種類に及ぶ「誘発電位検査」です。これまでの臨床的蓄積は相応の数に上りますが、あらためてのお勉強し直しの機会となりました。
「脳波」と「誘発電位」は同じ脳波ながら、「脳波」は生体脳から自発的に出る電位、その時一回だけをそのまま直接測定して記録する検査です。これに対し、「誘発電位」は音や光などの外部刺激への脳の反応を見ますが、実はとても小さな反応なので、一回の記録では何の反応が出ているかは見分けがつきません。そんな微小電位も100回―1000回と繰り返して刺激したものを重ね合わせる(加算)と、中枢神経や大脳にどんな反応が出ているのかが分かってきます。この加算演算には脳波計とは別の誘発検査装置が必要です。今回、佐野仁課長は「誘発電位検査」のなかで臨床的有用性が高いものとして確立した評価がある、音刺激に「聴性脳幹反応(ABR)」、また末梢神経神経への電気刺激で得られる体性感覚誘発電位(SEP)」と「神経伝導検査(NCS)」、の三つの電位検査について詳しく講義しました。
「聴性脳幹反応(ABR)」はクリック音という特殊な音刺激により現れる反応ですが、蝸牛から始まる聴神経と上オリーブ核など脳幹部までに見られる七つの反応を意味します。ABRは意識レベルに関係なく検査ができる、再現性もよい(検査しやすい)などの特徴があります。卑近な例では、新生児の耳が聞こえているかを診るための簡便なスクリーニング検査機器が用意され、検診に用いられています。
「体性感覚誘発電位(SEP)」は手や足の動きを司っている大脳の領域、体性感覚野の働きを見ることができる検査です。腕や脚の神経を電気刺激しますので、少々痛い検査となります。麻痺がある方では反対側の体性感覚野の反応が低くなりますが、てんかんでは、特にミオクローヌスてんかんで、逆にとても大きな巨大SEPが出現しますので、診断的価値には高いものがあります。
第三テーマ、「神経伝導検査(NCS)」は運動神経や感覚神経で生体電気が伝わる速さをみるものです。通常は毎秒数十メートルのスピードです。ギランバレー症候群や糖尿病性の末梢神経障害の程度をみるのに有用とされています。
実際の検査場面では、誘発反応としての波形がなかなかうまく出なかったり、電気刺激なので患者さんが怖がったり痛がったりで、検査がスムーズに行かないことが少なくなく、難しい検査の一つです。このような現場の苦労を、検査自体を開発してきた佐野課長と討議できたことは、稀なる幸運でした。しっかりとアドバイスを頂戴しましたので、次の検査に生かし、立派な結果を皆様に提供できるよう、また日々努力していきたいと励まされました。
(ベーテル検査科長 原田早苗)