てんかん病棟の栄養管理業務」
イーヴニングセミナーEESBベーテルてんかんケア実践講義:2019-第二期第1回講義「てんかん病棟の栄養管理業務」は、4月11日(木)に開催された。
勝山祥子さんは、てんかん専門病院ベーテルの管理栄養士である。栄養管理業務に携わりながら、栄養経営士の資格を取得している。2019年3月10日に開催された第4回全国栄養経営士のつどい大阪大会で実践報告した内容を中心に講義した。加えて、ベーテルで経験した症例報告2題から、てんかんケアを語った。
ベーテルの病棟は2階フロアにあり、厨房・栄養科事務所が隣接している。食堂で患者さん全員が一緒に食事をとることができ、多面的専門ケアが実践できる最高の空間となっている。開設当初より給食提供を(株)日清医療食品に委託して食事を提供している。
病院と日清は、双方ビジネスパートナーとして、共にさまざまな課題に取り組み改善してきた経過がある。この中で、今回報告されたのは5項目。一つに、食事内容では3項目の改善が図られた。①試食会を開催し米の品種の見直しを行った。②サイクル献立の見直しとして48日サイクルを35日サイクルとした。③サプリ食堂・シェフの献立・街道巡り食の旅・リクエスト献立と行事食の強化に取り組み、その結果、給食を提供する側のモチベーションアップが図られると同時に、患者の皆さまの食への関心が高まり、楽しみ度が向上した。二つ目は、約束食事箋の見直しを行い、全ての食糧について基準を作成したこと。三つ目は、食事形態の見直しを行いゼリー食を導入した報告となった。四つ目は、病棟業務を重視した管理栄養士の業務とし、病室訪問・栄養相談・聞き取り・リハビリや口腔ケアなどへの参加・他医療機関、施設、家族などへの連絡調整などを実施できるようにしたこと。五つ目は、入院治療で栄養指導を実施した患者さんの、退院後の外来ケアにおける栄養指導の展開について報告した。
栄養介入の症例の実践も報告された。糖尿病を合併する患者さんを通し栄養指導の実践報告がなされた。両親の支援を受けながら夫婦で生活しているが、スーパーのお惣菜や菓子パンジュース等で生活しているので、糖尿病は適切にコントロールされることがないままインスリン療法を受けていた。てんかんの入院治療が始まると同時に、目標体重を決めながら栄養指導を重ね、約4か月で-17㎏の体重減少に成功した。インスリンも10単位から2単位まで下げることができた。
第2例は、寝たきりの状況となっていた。経口で摂取できるまでにケアを続けた経過の詳細が報告された。病棟看護師やOTとチームを組んで、リハビリを実施しつつ経腸栄養から取り組みを開始し、約3か月かけて常食摂取が可能になったのである。
ディスカッションでは、最近の若い入院患者さん方の食行動に頭を悩ませられる新しい事態が話題となった。偏食が多くさまざまな工夫が必要とされる。慢性的な貧血があり、野菜は食べないからと食卓にもつこうとしない方。核家族化により家族揃っての食事の習慣もなくなり、みなの中で食事を摂ることを拒むなどが報告された。
規則正しく食事を摂ることも、てんかん薬を毎日欠かさず内服することも、継続することに於いて同じ困難を抱える課題である。専門家として、問題を速やかにキャッチし、チームで解決しようとする看護管理ケア・栄養管理ケアを展開していくことが大事となる。
海野美千代