・Monthly All-member`s Conference BETHEL:今月のこの症例2021年1月MACB-Ⅰ

・Monthly All-member`s Conference BETHEL:今月のこの症例2021年1月MACB-Ⅰ

ベーテルでは、毎月第4金曜日スタッフ全員参加の元、症例についての重要な情報を提供し、診断・治療・てんかん看護ケアについて学びを深めるMACBが開催されている。

2021年、第1回目は後頭葉に皮質異形成が疑われ、乳児期より熱性けいれんの既往があり、発作重積歴を持っている小学生の少女の症例であった。VPAから治療開始され、CLB、CBZ、LTG、LFP、LEVとさまざまなてんかん薬試用の経過を経て、幸いにもTPMが奏功し、大きな発作が完全抑制された。しかし副作用の影響から、安定剤併用となっており、学習面での心配が表面化してきた現状があり、病状を正確に診断し、これからの治療・看護ケアの目標を明確にするため入院治療が選択された。

 

これまでも、24時間VTR同時記録検査で確定診断作業が継続されていたが、発作頻度は比較的高いのに、VTR同時記録で確認できた発作時脳波は2回のみであった。この記録は非常に重要なデータとなり、根気よくてんかんの確定診断作業を継続することの重要性を改めて思い知らされた。現在は、活動性の高かった脳波所見が、一晩に20回位の小さな出現に抑えられており、薬物治療の効果が確認された。MRI(ASL)によって、てんかん発作時やその直後、また時間が経過しての脳血流の変化を比較する検査データも示され、DrソガからASL結果の判読に関する指導を頂いた。脳波検査やMRIにおいて、発作間歇時から発作時、その後の経過も踏まえた時間的経過の中での検査結果の重要性を学ぶ機会となった。

 

認知発達面では、初診時からの発達指数、知能指数等の推移が示され、認知発達が低下している状況が報告され、今後の支援の必要性や支援方法についての検討がなされた。また栄養面でも、食事摂取のムラから身長体重が理想値よりも低く、細かな栄養指導を継続していくことが提案された。入院中の様子やADLの面についてNsやOTによる評価が報告され、日常経験の積み重ね、年齢に合わせた成功体験の獲得の必要性が話された。

 

難治に経過してきた少女が、薬物治療によって発作が抑制された症例であった。今後はてんかん治療に加え、身体面や認知面など総合的に経過を追っていくことが必要であり、外来看護ケアの重要課題が整理された。症例検討に参加し、その時点の発作や検査結果だけが本人を決定づけるのでははく、長い時間の経過の中での比較や考察の視点をもつことが、ベーテルのスタッフとして必要になってくるのだと考えさせられた勉強会であった。

公認心理師 阿部佑磨

 

<座長総括>

私がてんかん看護に従事し、初めて出会ったジーン・T・ショウプ先生の著書に、てんかんを有する人々は、一般にいつ何時発作が起きかねないし、またその生活も破綻しかねないし、あるいは困難な問題に直面し、ある種の選択を迫られるような局面を迎えることになりかねない。しかし、どのような場面に遭遇しても、医学の専門家集団の時宜にかなった適切な援助を受けることで、大きな改善をもたらすことができると述べられている。

私たちは、一人ひとりの症例を積み重ね、プロフェッショナルな医療・看護ケアを提供できる人材としての活躍が期待される。この少女の、これから抱えるてんかん問題を予測しながら、家族や学校、関係機関と連携し支え続けることが至上命題となる。このための修行の現場がMACBであり、てんかん専門病院ベーテルのスタッフ教育の登竜門となる。皆さま一人一人の闘病に通じ、寄り添えるスタッフとしての活躍を目標に、学びを深めます。

海野美千代

 

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