・てんかんイーブニングセミナーEESB第三期第4回講義を開催

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てんかんイーブニングセミナーEESBベーテルてんかん実践講座
「長期入院が見込まれる患者ケア」

2019年第Ⅲ期第4回講義報告

 

てんかんイーブニングセミナーEESBベーテルてんかん実践講座2019年第Ⅲ期第4回講義(2019年8月22日開催)を報告する。今回の講義テーマは「長期入院が見込まれる患者ケア」で、看護科(小島奈穂美科長)と療法科作業療法士(大野俊介OT)の二人での協働講義となった。

1)

まず、看護科長小島は、2019年の上半期の入院患者は128名で、予定入院期間通りに退院したものA群110名、予定期間が延長した患者数はB群18名であった。今回の主題は後者、入院予定期間が延長になった患者B群である。先ず、A群とB群では患者の性別、現年齢区分では違いはない。発病年齢では16歳以上での発病者が多かった。次に、発作頻度ではB群で低頻度のものが多いという興味深い特徴が得られた。これはA群が入院目的が脳波検査入院であるのに対し、B群が脳波検査のみで済むてんかんに関わるその他の問題を抱えていることを暗示している。A群では約8割が入院期間が3週以内に設定されている。B群の入院期間で最大グループは50日までが7割以上を占める。

単純比較ができない今回の調査では、その三分の一の6例が詳細に紹介された。第1例は光感受性を有するが、終日・断眠の長時間脳波検査でも通常は発作波が検出されない。入院当初、数時間以上も続く非てんかん性の発作状態を示した。医学的問題を含めて、7項目の理由因子が示された。第2例はご本人が訴える発作症状は頻回だが、周囲には気づかれない。また、発作時脳波に所見はない。非てんかん発作の疑いがあり、服用している薬物の断薬作業となった。

、年齢の設定の問題も少なからずはあるが、患者本位の理由。例えば怠薬、生活習慣の乱れ、不活発等の問題が報告された。入院延長の理由は5項目に絞られた。第3例は光・図形感受性てんかん。脳波検査では光・図形刺激時にのみ発作波が誘発される症例。初期飽和治療となった。就職が決定しており、退院延長の理由は5項目に留まった。

以下、第4例:減量作業中の発作発来で、薬物治療計画をあらためて改訂。発作頻度が高くなく、長期入院は免れているが、単身生活を含む4項目が問題。第5例:高校入学直前のけいれん発作。脳波所見が乏しいが、投薬を開始し、平均発作間隔の3倍の期間を無事超えたので退院。問題項目は3点。第6例:既に他院で投薬を受けていたが、怠薬による発作での入院。1年前の入院精査結果の治療方針を再確認。問題項目は3点。以上が紹介された。

B群18例の入院延長の理由は、22項目であった。最大の理由は薬物導入10例であった。次が精神科的問題8例、発作再発6例、生活環境5例が続く。一方、18例が22項目のうち何項目が当てはまるかのスコアでは7項目が1例、6項目が1例、5項目が3例、4項目が3例、3項目が3例、2項目が7例であった。従って、問題点が多ければ多いほど予定入院期間が延長となることがあるとは必ずしも言えない。B群では3−4項目以上である場合には早期に入院目的を明確にしていくことが可能であるとした。予定期間通りに退院できた86%を占めるA群に分析をすすめる準備を行うこととなる。

 

2)次に作業療法士大野俊介は、特に入院期間が3月余りまで延長した3例への、社会復帰療法のケア提供を追加発表した。

第1例は既述第1例で、100日を超える入院期間中の本人の変化を詳細に報告した。特に入院生活を三期に区分した。初期は患者の役割としてのイニシアチブ発揮が困難な時期、第2期は生活が活き活きとした時期、第3期は病棟活動・集団行動で積極的に位置する時期。退院後に生活設計を図ることとなる。

第2例は発病高齢で脳挫傷後遺症と発作重積による緊急入院を二度繰り返している。非けいれん性発作重積は気づかれがたく、家庭生活も余りに静かな不活発な生活。入院後もほぼ臥床で離床が難しい。運動はもちろんレクリエーションへの誘いも拒む。OTケアは生活リズムの再獲得、身体機能の低下防止、興味関心の喚起を目標とした。薬物治療の効果を見据えながら、次第に意思疎通が取れるようになっていく過程を二期に分けて紹介した。

第3例はてんかん外科を受けて久しい方。次第に不活発となり、長い間、生活目標を見失った状態に陥っていた。106日間の入院期間を本人の生活状態、精神状態に沿って三期に分けて、就労支援ケアの枠組みを紹介した。

以上から、入院期間が延長となった場合は、作業療法士の立場からは生活の再構築のためのプログラムが明確化し、患者側からは退院後生活の立て直し、ケア提供者側からは管理も含めて退院後のケアが可能となる、とした。

 

討議は活発となった。医療提供はベーテル設立時と比べ、それぞれの事情を抱えた様々な患者さんが対象となってきている。看護師らスタッフは、それぞれの家庭事情や生活背景などについていかなければならない。入院時にどれだけ患者の社会背景を聞きとり、問題点(優先課題)を特定できるかで、スタッフやチームの実力が問われることとなる。小島科長は「専属ナース」が提案された。

作業療法士OTの私の経験では、入院時オリエンテーションの際に、検査入院ですと言われるので、OTの説明は不要では、とくさってしまうのも偽らざる心情となる。提示されたB群18例では、OTの立場からは問題はほとんどない。

ベーテルスタッフは患者背景や心情を“汲める”スタッフが多いと自慢できる。

ベーテルは多面的ティームアプローチMDTA(MDTB)が十分機能しているからである。将来、問題項目をスコア化できた場合、A群の分析の結果が問題になると予想される。検査入院の結果、A群に何が起きているであろうか。近々のテーマとなっており、その第一報が楽しみである。

大野俊介OTが発表した症例はしっかり中期間入院治療を受けることができた症例であった。今回のテーマは“短期間の入院でもOTは有効であるか、であるらしい。短期間の作業療法の有効性は学会等も論議されているらしい。でよく報告されている。同じくOTの当方は、OTは短期集中検査入院後の生活をよりスムーズにするために“必要な回復プロセス”という長い階段の一段になればよい。身体機能や体力面、作業耐久性は一週間では培えない。退院後に本人がやりたいことを速やかに行っていくためのラジオ体操とする。トレーニング的な見た目でなく、楽しい日課を省かず、やる。抵抗なく参加できれば、最初のオリエンテーションになるし、やれば意識づけられる、大切な過程となる。

短期であれ、長期であれ、案内が通じて、心地良く入れる人は問題がない。

 

作業療法士 有賀 穰

 

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